源氏絵のご紹介

「源氏絵」といえば、日本で非常に知名度の高い『源氏物語』を題材とした絵のことを指します。
今回は、この『源氏物語』がどのように浮世絵として表現されてきたのかを簡単に触れつつ、実際に入手した作品もあわせてご紹介できればと思います。

源氏絵とは

江戸時代に入ってから木版画の発達により、源氏物語を題材としたものが描かれるようになります。浮世絵に描かれた源氏絵は、簡単に言うと原作に忠実な絵と、別のものに見立てた「見立て絵」の2種類に分かれます。

平安時代中期に作られた初期の『源氏物語』には本文のみで挿絵はありません。その後、平安時代の終わり頃になると『源氏物語絵巻』が作られますが、こちらは木版画ではなく手描きによる写本です。1冊ずつ人の手で写す必要があったため、制作には大変な手間と時間がかかり、一般の人々が気軽に手にできるものではありませんでした。
そのような中で、江戸時代に出版された『源氏物語』の版本である『絵入源氏物語』は、挿絵が入り、内容もわかりやすく、一般の読者にも読みやすい源氏物語として登場しました。
さらに、『絵入源氏物語』とは別に、江戸時代の数名の浮世絵師たちが、王朝風の源氏物語の世界を題材とした作品をいくつも手がけています。

一方、物語をそのままに描くのではなく、物語の登場人物を江戸時代の庶民の姿に置き換えて表現することが「見立て絵」と呼ばれます。しかし、これらの絵は当時の『絵入源氏物語』を題材にするというより、厳密には『偐紫田舎源氏』を題材にした作品のことを指します。

『偐紫田舎源氏』とは、柳亭種彦による物語で、源氏物語のあらすじをベースにしつつ、室町時代のお家騒動に仕立てた源氏物語の翻案小説です。この作品は江戸っ子たちの人気を集めて大ベストセラーとなり、14年にわたって書き継がれたが、作者の筆禍と死去により、第38編(152冊)までで終わりました。小説のほかに、『偐紫田舎源氏』を題材にした浮世絵が数多く出版されました。

今回は後者の「見立て絵」を買取させて頂いたので、ご紹介できたらと思います。

三代豊国 虫干しの図

着物をタンスから出して吊るし、干している場面が描かれています。

源氏物語に決して詳しいわけではない執筆者ではありますが、『源氏物語』の作中には、衣服の管理や季節ごとの装束に関する描写は多く、衣替え・装束の準備・衣服の色目などはしばしば描かれています。しかし、鮮やかな着物はいかにも江戸らしい雰囲気が感じられます。

着物の帯は幅広く、着物も『源氏物語』のように何枚も重ねた「層」ではなく、柄がはっきりとした華やかなデザインが用いられています。 髪は高く結い上げられ、かんざしや櫛をたくさん飾った髪型はまさに江戸時代の女性の姿そのものです。

豊原国周 光君庭前遊

こちらも同様、描かれている内容はいかにも江戸らしい雰囲気が強く感じられます。

鮮やかな着物のほかに、園内には散策路が張り巡らされ、人々が橋や茶屋をめぐり、花見を楽しむ様子が描かれています。 まさに江戸時代の風俗や暮らしを映し出した風景と言えるでしょう。

以上の2つの作品は、いずれも江戸時代風にアレンジされた表現が用いられており、まさにこのような手法こそが「見立て絵」と呼ばれるものです。

 

源氏絵の世界を体験できる作品の例をここからご覧ください。

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